6月5日(金)

プレコングレス


6月6日(土)


6月7日(日)


千住淳先生(浜松医科大学子どものこころの発達研究センター・教授)のご近影

千住 淳 Atsushi Senju

浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター・教授
Research Center for Child Mental Development, Hamamatsu University School of Medicine

講演題目

多様な子どもたちの育ちを理解する


講演概要

子どもの育ちは一人一人違う。これは、一定の範囲までは「個性」として捉えられているが、「発達の遅れ」や「発達障害」として、医療や教育、社会な支援の対象となる子どもたちも、一定の割合で存在する。本講演では、演者がこれまでに行なってきた基礎研究を概観し、子どもの一人一人違う発達を理解する枠組みを提案する。特に、演者の専門である社会性の発達を例に取り、発達の機序や多様性が生まれる背景、また、自閉スペクトラム症として診断を受ける当事者の特性や主観的経験に関する研究を概観し、多様性が社会規範や制度とどのように相互作用をおこし、個性や障害につながるのかについて議論する。さらに、多様性の理解を前提とした新たな子どもの育ちの理解と支援の枠組みについて、演者らが推進している取り組みについて紹介する。


経歴

東京大学総合文化研究科にて博士(学術)を取得後、ロンドン大学バークベックカレッジを経て現職。他者との関わりの心理学的・脳科学的基盤とその発達機序、自閉スペクトラム症当事者における対人相互作用の特徴について理論・実証研究を進める。日本学術振興会賞(2020)、中山賞奨励賞(2015)、BPS Margaret Donaldson Early Career Prize (2015)、BPS Neil O’Connor Award (2011) など受賞。著書に「社会脳の発達」(東京大学出版会, 2012)、「社会脳とは何か」(新潮社, 2013)、「自閉症スペクトラムとは何か」(筑摩書房, 2014)など。

Professor Senju was awarded PhD from University of Tokyo, and worked in Birkbeck, University of London before taking up the role of Professor and Center Director in Hamamatsu University School of Medicine. His research focused on psychological and neural mechanisms underlying human social interaction, its development, and diversity seen in autistic people. He was awarded JSPS Prize (2020), Nakayama Award for Distinguished Early and Middle Career Contributions (2015), BPS Margaret Donaldson Early Career Prize (2015), BPS Neil O’Connor Award (2011) among others.

JST未来社会創造事業「個人に最適化された社会の実現」領域 千住課題 公開キックオフシンポジウム

テーマ

多様な子どもたちに寄り添い・支えるデータ活用技術

企画要旨

日本の子どもたちの精神的幸福度は先進国の中で最低水準であるというショッキングな現状が報告されている。日本の発達支援・教育の現場は、人員不足や専門性の不足で疲弊し、多様な子どもたち一人ひとりの発達に寄り添い、細やかに支えることが極めて困難な状況にある。この現状を打破するため、本研究開発では、多様な子どもたちの育ちやウェルビーイングを見守り、理解し、支えるデータ活用技術(WeBB)の開発を目指している。本シンポジウムでは、WeBBの全体像、中核となるデータ計測・解析技術、支援への援用について概観し、子どもたちの幸せにつながる技術開発の未来像について議論する。

企画者

千住 淳 (浜松医科大学・教授)

司会者

千住 淳 (浜松医科大学・教授)

講演者

千住 淳 (浜松医科大学子どものこころの発達研究センター・教授)
西尾 萌波(エフバイタル株式会社・執行役員) 
中村 亨 (大阪大学基礎工学研究科・教授)
和久田 学(公益社団法人 子どもの発達科学研究所・所長 / 主席研究員)

指定討論者

土居 裕和(長岡技術科学大学・教授)


講演要旨

千住 淳:子どもの個性とウェルビーイングを支えるデータ活用技術開発

本研究開発では、①マルチセンシングで、子どもたちの育ちや訴え、さらには「声なき声」までをも見える化し、データベース化する計測技術、②子どもたちの個性・ウェルビーイングをリアルタイム且つ自動的に評価・推定する高次データ統合アルゴリズム、③子どもたちのウェルビーイング向上ニーズをデータから検出し、個別最適化された支援へとつなげるプロトコル、の三要素を開発、システム統合し、子どもたちの発達段階に応じたシームレスなデータ活用や支援を可能にするデータ活用技術(WeBB)の確立を目指している。本講演では、WeBB開発の背景と概要について紹介し、乗り越えるべき課題やそれに向けた取り組みについて紹介する。

西尾 萌波:AI動画解析による子どもの個性理解と発達支援

正確な発達評価は発達の遅れの早期検知・介入の基盤であるが、専門人材の不足が顕著な現状においてその網羅性や正確性が担保されているとは言い難い。本発表では、家庭や保育園、療育施設など日々の場での動画に基づき、乳幼児の発達を言語・認知・運動・社会性の観点から網羅的に評価する技術について紹介する。また、これらの技術に基づくアプリケーションの乳幼児健診や療育場面における活用可能性についても検討する。

中村 亨:AI × IoTによるリアルワールドでのこころの客観的評価

ウェアラブルデバイスなどのIoT機器の普及により、リアルワールドで取得される生体情報に基づく心身の状態推定技術の開発が注目されている。我々は、Ecological Affective Computing(EAC)の概念のもと、AI×IoT技術を用いた生態学的妥当性の高い感情状態推定技術の確立を目指し研究開発を進めてきた。特に子どもは、自身の感情や心身の状態を言葉で適切に表現することが難しい場合が多い。EACは、このような対象における日常生活下の状態把握に有用であると考えられる。本発表では、EACに関する研究成果とともに、子どもへの展開を見据えた取り組みについて紹介する。

和久田 学:五歳児健診から学校現場までの切れ目ない支援を目指して

日本の子供の精神的幸福度は先進国でも最低水準にあり、不登校やいじめ、自殺者の増加は喫緊の社会課題である 。そうした問題を解決するには、子どもの発達に対する科学的な視点と、環境への働きかけの両者が必要である。本講演では、開発された技術をいかに現場のアクションに繋げるかという「社会実装プロトコル」に焦点を当てる。具体的には、五歳児健診の機会を活用したデータの収集とフィードバック、多数の公立小中学校における毎日のアプリ入力を通じた「声なき声」の可視化を紹介し、学校風土などの環境の評価と教職員へのフィードバックの仕組み、を紹介する。計測・解析技術を、教育・保育現場での具体的な支援や環境調整、最適な学びのマッチングへと統合し、乳幼児期から学齢期までシームレスに個性を育む社会システムの展望を議論したい。

テーマ

赤ちゃん・子どもとのコミュニケーションの未来

企画要旨

本シンポジウムでは、赤ちゃんと子どもの絵本とのかかわり、音楽を介した多感覚的な遊びと学び、アートをきっかけとした世代・コミュニティ間の人々のつながりなど、多様な場面から子どもの成長を支えるコミュニケーションの新しいあり方を提案してこられた方々に講演いただく。時代普遍的なコミュニケーションのエッセンスを踏まえながら、赤ちゃんと子どもたちの未来のためにどのような環境やかかわりが求められていくのかを議論する。

企画者

梶川 祥世(玉川大学・教授)

司会者

梶川 祥世(玉川大学・教授)

講演者

小林 哲生(NTTコミュニケーション科学基礎研究所・上席特別研究員)
金箱 淳一(神戸芸術工科大学・准教授)
松本 理寿輝(ナチュラルスマイルジャパン(株)まちの保育園・こども園)

指定討論者

皆川 泰代(慶應義塾大学・教授)


講演要旨

小林 哲生:絵本との出会いを支える技術: デジタルとアナログの架け橋をめざして 

絵本の読み聞かせは、赤ちゃんの言語や心の発達を後押しする強力なツールのひとつであり、乳児期でのその習慣化は、学童期の語彙数や読解力といった言語能力の向上にポジティブな影響を与えることが知られています(e.g., Demir-Lira et al., 2019)。しかし、絵本の読み聞かせの習慣化に至るには、赤ちゃんにまずは絵本を好きになってもらわないといけませんし、養育者の負担軽減も考えていかなければなりません。そこで私たちは、これらの課題を解決するために、赤ちゃんの興味や発達段階に合わせた絵本を推薦するAI(ぴたりえシリーズ)を開発したり、紙媒体のオリジナル絵本(パーソナル知育絵本)の事業化をしたりしてきました。本話題提供では、これらの技術を利用して公共図書館などで行った実証実験の内容を紹介しながら、デジタル時代における絵本の時代普遍的な価値や、未来の読書環境のあり方について考察します。

金箱 淳一:「共遊楽器」の発想と社会実装

本講演では、音を振動や光に変換することで、聞こえる人も聞こえない人も共に音の体験を楽しむ「共遊楽器」の発想と、その社会実装例について紹介する。
従来、音楽体験は“耳で聞くもの”とされがちだが、聴覚だけに依存しない方法で音の体験を拡張することに挑戦してきた。「共遊楽器」は、音を振動や光、触覚として変換することで、聞こえる人も聞こえない人も身体で音を“利く(=五感で味わう)”体験を可能にするツールである。また、触れたくなる仕掛けや共に振動を共有する設計が、他者との関係やコミュニケーションを生み、遊びとしての音楽参加を促す。身体特性・感覚特性を考慮して設計されたアクセシブルな装置が、結果として多くの人にとって豊かな体験を生み出す過程を通して、赤ちゃんを含む多様な身体が共に遊び、感じ、関係を紡ぐためのエンタテインメントの可能性を考察する。

松本 理寿輝:まちぐるみで乳幼児の学び・育ちをひらき、子どもが参画しながらまちを育んでいく園の実践――まちの保育園・こども園の実践から

まちの保育園・こども園では、その名が示す通り、「まちぐるみの保育実践」を大切にしている。ここでいう「まちぐるみ」には、二つの想いが込められている。一つは、子どもたちの学びや育ちを、園内に閉じることなく、地域とともに豊かにしていくことである。もう一つは、園そのものがまちづくりの担い手となり、多世代交流や地域の文化創造を通して、地域全体のウェルビーイングを育んでいくことである。そのため園内には、地域と園とのあいだに位置する中間領域として、カフェなどのコミュニティスペースを設けている。また、「人は人がつなげる」という考えのもと、地域と園、子どもと社会を結ぶ役割として「コミュニティコーディネーター」を常勤職員として配置している。そこで大切にされているのは、大人にも子どもにも向けられる同じ眼差しであり、一人ひとりの存在そのものを喜び、互いに育ち合うコミュニティを創造していくことである。保護者や地域の参画を通して、「子ども観」「保育観」、そして私たちはどのようにありたいのかという倫理的実践を支える「私たち観」を問い直し、耕し続けている。その営みの中心にあるのは、子どもがまちに市民として参画していくことであり、まちで育つ「子どもの姿」を大人が協働で解釈し合い、喜び合い、子どもから学ぶことにある。子どもと世界に出会っていく経験を通して、私たち自身もまた、すでに知っていると思っていた世界に、新たに出会い直していくのである。そのまちの人々の経験と協働が、まちを豊かな場として育むための状況をひらいていく。当日は、まちの保育園・こども園で日々生まれている乳幼児の探究や、まちづくりの実践を具体的なエピソードから紹介し、そこからどのような信念・価値観・園文化が生成されているのかを手がかりに、参加者の皆様とともに学び合う時間を創出したい。

テーマ

多職種連携による発達支援

企画趣旨

子どもの発達をより的確に理解し、支援につなげるためには、医療・教育・行政など多職種の協働が不可欠である。本企画シンポジウムでは、乳幼児の発達予測など、多面的な実践と研究事例を共有し、今後の発達支援の在り方を展望する。

企画者

土居 裕和(長岡技術科学大学・教授)

司会者

土居 裕和(長岡技術科学大学・教授)

講演者

加藤 正晴(一般社団法人子どもと育ちのコホート研究・実践協会)
小林 恵 (新潟大学・准教授)
Annik Beaulieu (AP-HP, Sorbonne University)、土居 裕和(長岡技術科学大学・教授)

指定討論者

渡邊 克巳(早稲田大学・教授)


講演要旨

加藤 正晴:CDC発達マイルストーン日本語版の開発

近年の発達障害への関心の高まりや、幼・小接続の課題、小学生の不登校・特別支援の増加などを鑑みると、社会性や言語・コミュニケーション、情動といった領域の早期把握が重要です。そこで我々は、米国疾病予防管理センター(CDC)による発達マイルストーンに着目しました。これを日本語および日本の環境に適応させ、上記領域を評価するスクリーニングツールとして提案します。
 このツールにより保護者は我が子の発達を包括的に記録・把握でき、研究者は発達データを国際標準レベルに引き上げられます。さらに3歳児健診の場面では、子どもの発達経過を専門家と簡単に共有できるようになります。
 現在、発達心理学・医学・特別支援教育等の専門家による作業部会を設置し、日本版の開発とBOLDプラットフォームでの標準化データ収集を進めています。講演では、得られたデータや日本の子どもの発達パターンについての分析結果をご報告いたします。

小林 恵:後期早産児における視知覚認知の発達過程

早産は神経学的・精神医学的障害の主要な原因の一つであることから(Jones et al., 1998)、その発達過程が注目されてきたが、これまで主に研究されてきたのは在胎28週未満(出生体重1,000g未満)の“超早産児”である。一方、特に身体発達は概ね良好な後期早産児(在胎34週〜37週未満で誕生)も、言語・認知機能の発達遅延や神経発達症などのリスクが高いことが近年報告されつつあるが(Pertini et al., 2009; You et al., 2019)、これらの基盤となる視知覚認知の発達過程はほとんど検討されていない。
 そこで我々は、早産による視覚情報の早期入力が視知覚認知処理の体系的発達の崩れを引き起こしており、これが早産児の神経発達症リスクと関係するという仮説を立て、大学病院小児科と協働して検討を行っている。本シンポジウムの講演ではその一部として、主に顔知覚の発達について、正期産児と早産児を比較したデータを報告する。

Annik Beaulieu・Hirokazu Doi:Early Motor Markers and Very Early Intervention in Autism

Emerging evidence suggests that neurodevelopmental trajectories associated with autism spectrum disorder (ASD) can be detected very early in life. In this presentation, I briefly report findings from longitudinal studies of fetal and early infant motor behavior analyzed using Prechtl’s General Movements framework, with a focus on qualitative alterations in motor organization and variability.
 I also introduce Let’s Play Together (Jouons Ensemble), a very early parent–infant interactive intervention designed to support sensorimotor regulation and early relational engagement. Taken together, these approaches highlight the value of integrating early motor markers with early supportive interventions, shifting the focus from diagnosis toward prevention and developmental support.

準備中

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