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 シンポジウム2

 3歳児神話を検証する2〜育児の現場から〜

白梅学園短期大学教授 鈴木 佐喜子

6. 働く母親・保育現場と3歳児神話

 これまでお話ししてきました現状を踏まえて、働く母親や保育現場と3歳児神話について述べたいと思います。働く母親や保育現場が3歳児神話の呪縛から自由になっているかというと必ずしもそうではありません。母子関係の時間ではなく、その質であり、帰ってから母子の触れ合いをたっぷりすることが大切ということが、働く母親の子育てについて、多くの人が考えるところではないでしょうか。実際、多くの母親が、昼間は子どもと過ごすことができないので、その分を帰宅後に家で沢山持ちたいと思って、精一杯頑張っています。

 このように考えることに意味がないと考えている訳ではありません。『大阪レポート』(服部祥子・原田正文『乳幼児の心身発達と環境−−大阪レポートと精神医学的視点−−』、名古屋大学出版、1990年) というかなり大規模な調査があります。この調査は母親の就労だけを取り出したものではありませんが、母親の就労と子どもの発達との関係についてもすべての検診結果について調べています。そのなかで、「母親の就労は子どもの発達にはっきりした影響を及ぼしていない」という働く母親にとって大きな安心材料となる結果を明らかにしています。この点についてレポートでは、「子どもへの関わりが少ないという自覚が子どもとの関わりを積極的自覚的なものとし、こうした働く母親の子どもと関わろうとする積極的な姿勢が時間の少なさをカバーしているのではないか」と指摘しています。働く母親の努力が、子どもと過ごす時間の少なさというマイナス面を補っていると言うことができると思います。

 しかし、今の働く母親の現実が厳しいなかで、不安に思ったり、悩む母親がいるという事実もあります。「昼間一緒にいられない分、夜や休日に沢山接したいと思っているが、実際は家事もたまってしまい、そちらにも時間をさかなければならない。結局、自分自身ジレンマに陥ってしまう」「もう少し子どもとゆっくり遊んでやりたいとは思いながら、なかなか平日にはできません。こんなことでいいのかと迷ってしまう」「子どもと接する時間が少ないのに、早く食べてお風呂に入り、いつも早く早くでゆとりがない」など。母親が疲れてイライラしたり、忙しくて子どもと十分に接することのできない悩みは切実で、時には子どもの成長に歪みが生じるのではないかと不安になる母親もいるのです。

 保育現場のなかでも、「子育ては母親」という見方がまだまだ強い傾向があります。子どもが病気の時、なかなか休めない親を「ひどい親」と見たり、子どもに何か問題が生じると、あの母子関係は問題と母親だけを問題にし、「お母さん、何とかして下さい」と言ってしまうことは少なからずあります。父親が保育園のお迎えに来ると、「お父さん、えらい」と言うのに、母親がするのは当たり前。少し問題があると、「あの母親は・・」と非常に厳しい目で見てしまう傾向があるように思います。

 しかし、今、働く母親が置かれている状況を見て見ますと、「男子並」の働き方を求められて、長時間過密労働であったり、母親にも出張、残業が求められたり、子どもが病気でもなかなか休めない状況があります。特に今は不況の中で、人員削減が進み、労働環境は一段と厳しくなっています。しかも働く母親の場合、父親の帰宅は遅く、家事・育児の負担は母親の方により多くかかっています。仕事と子育てが両立しやすいように見えるパートタイムの母親も、労働時間は限りなくフルタイムに近く、低賃金で有給休暇・育児休業がないなど労働条件は悪く、その上、夫は「家事や育児にさしつかえないなら働いてもいいよ」と家事も育児も専業主婦並にやらなければならない大変さがあります。

 母親が置かれている現実をリアルに把握しないと母親を追い詰めたり、親と保育者が理解し合えず不満をため、トラブルになってしまう危険性があるように思います。

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